”これは経費で落ちません”原作を読む⑤!太陽は沙名子のことを誰かに話したくて身もだえ!

山田太陽は、入浴剤開発室の駐車場で沙名子にメールしてみた。勤務中はメールをしないようにと沙名子から言い渡されていたが、もう定時は過ぎている。会社を定時に出ていれば沙名子は電車の中にいる時間帯だ。

太陽は、今日1日一緒だった山崎柊一のことを沙名子に話したくてうずうずしていたのだ。何故かわからないが、山崎さんすげえ!と言う気持ちになっている。返信を待ってみたが来ないので、駐車場から車を出し大通りに向かった時スマホが鳴った。

すぐに信号が赤になったのでスマホを覗いたら、待っていた沙名子からの返信。
”お疲れさま。よかったね。何で研究所?”

おっ、すげえ、即返信!しかも疑問形・・・と思ったとたん信号が青。
太陽はスマホを座席にほん投げた。天天コーポレーションでは、運転中の操作は禁止されている。本当は赤信号の時も駄目なのだ。社名が入った社用車の中で、メールしていて見つかれば大変なことになってしまう。

しかし、太陽は返信したい思いに勝てず、通りすがりにあったコンビニの駐車場に車を入れた。
”山崎さんが行きたいと言うので、連れて行った。カガミッキー(美月)さんにあったよ”
”山崎さんと一緒なの?”

”いや、研究所で別れた。あの人流石だわ!研究所で商談まとめたよ。沙名子さん、今家にいるの?”
”今外出中。すぐ会社戻る。ちょっと残業する予定”
”そうか、俺は会社に戻ったら終わりだわ。1時間後くらいかな”

ふと太陽は思った。「何時に終わるの?」と聞きたいところだ。本当の彼氏ならば・・・
「俺と同じ位に終わるなら、どこかで食事でもして帰ろうよ」と言いたいけれど、しかし会えるのは週末だけ。今日は水曜日なので誘うのは許されない。太陽は、沙名子を誘うことを諦めた。

先輩の鎌本からメールが入ったが無視していたら、またスマホが鳴った。鎌本かと思ったら沙名子からなので、あわてて車を止める場所をさがした。更地を見つけて車を入れ、エンジンを切る。

”太陽さん、終業後に時間ある?何処かで食事しましょうか。お酒はNGですが、予定は如何ですか?”
エンジンを止める間ももどかしく、メール画面を見た太陽は、猛然とスマホに向かう。”了解” と返信してから会社近辺の店をチェックする。酒は駄目と書いてあるので、長居は出来ないと言うことなのか・・・

牛丼店やファーストフードに行くほどの間柄には、まだなっていないし・・・と思いつつ、太陽はスケジュールアプリにSMと書き込んだ。

青木祐子さんの「これは経費で落ちません」。
原作は「1巻」~「6巻」。1巻あたり4話で構成されていますが、5巻だけが5話まであり合計25話。

こちらはドラマと別物・・・原作に沿った形で、森若沙名子と山田太陽の恋に特化して追いかけてる・・・

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太陽は沙名子のことを誰かに話したくて身もだえしている!

山田太陽は水曜日の午前中、パラカフェ用の入浴剤と石鹸を社用車に積み込んでいると、山崎柊一がやってきて、「パラカフェにいくんだろ。俺も連れて行ってくれ」と言う。

「いいっすよ。何かあります?」
「パラカフェ、ずっと見てみたかったんだけど、機会がなかったんだよな。今日は鎌本さんもいないだろ。できれば帰りに研究開発室に寄ってもらいたいんだ」

「今日打ち合わせがあるんで、研究所に行くの遅くなっちゃいますよ。俺はいいけど」
「遅くなるのは構わないよ。中々時間とれないしね」
「そう言えば山崎さん、来週1週間いないんですよね、出張で」
いつもは他人の出張など気にすることはなかったが、今日は特別なので、山崎柊一の出張が頭に浮かんだ。

山崎柊一は穏やかに言った。
「今日は太陽の下で仕事するよ。何でもいい付けてくれ」
言葉通り、山崎柊一は手際よく段ボールを、後部座席に積み込んでいる。この前山崎が社長に、成績がビリだった太陽のグラフをみせた時、好かれていると感じた太陽。やはり山崎から目をかけられていると確信した太陽。

エンジンをかけ、シートベルトを締め、大通りに出た時山崎が突然言った。
「森若さんてさ」と。太陽は思わずブレーキを踏んでしまいそうになったが、できるだけ普通の声で、
「あー、経理の森若さんですよね。俺も世話になっています。いい人ですよねえ」と返す。

「あれっ、そんなんでいいの太陽。森若さんのメールアドレス、ずっと知りたがってなかったっけ?」
「そうでしたっけ?」平静を装いながら、内心は焦りまくっていた。山崎柊一は記憶力がいい。何か月も以前のことをしっかりと覚えていた。

太陽は、企画課の中島希梨香経由でアドレスを手に入れたら、沙名子に軽蔑されただけだったので、まるで高校生のように、1人になるのを見計らって待ち伏せて告白した。

今年の8月になってから、食事に行くようになったが、会えるのは偶数日の週末だけ。会社での沙名子は、顔色一つ変えない。LINEはやらないので、だらだら連絡を取ることもない。

だけど太陽は、これだけのことでずいぶん満足している。
どうしてこんなに満足できるのかと思うほどなのだ。
更に、よくやった、俺!と、自分で自分を褒めまくっている。

沙名子が喜びそうなイベントや、好きそうな店を探し出して、沙名子が喜んでくれたら嬉しくてたまらない。太陽は思う。”俺は思っていたより、奴隷体質でした!はい”

どちらかと言えば、太陽はまめで、女王様気質の女性が好きなのだけれど、沙名子は女王様ではない。食事は全て割り勘だから。しかし、嬉々として沙名子に尽くしている自分に驚いている。

「そうなのか、じゃあ、森若さんと個人的には話さない?」
「話さないですよ。森若さんて凄くビジネスライクじゃないですか。山崎さんこそ、森若さんのこと何か知ってますか?」全然知らないと答える山崎柊一。沙名子に興味がない方がいい、良かったと思う。

太陽は内心身もだえしているのだ。沙名子のことを誰かに喋ってしまいたい・・・と。
沙名子はあれで凄く可愛い。よく見ても見なくても美人だと言いたくて。
休日には変なネイルをしていて、寿司は大好きだけど回転寿司は行きたがらないとか。

服を買うのは好きだが、ショッピングは好きではない。
シャーロック・ホームズとジョジョの奇妙な冒険の第2部に反応する・・・こと以外は、趣味が掴めないことなど。
沙名子について、いろんなことを誰かに話したい思いが、胸に溢れそうなになっている。

天天コーポレーションは、社内恋愛を禁じていないから隠す必要はない。正直に言って、沙名子と太陽の組合せは、結構好感度が高いのではないかと思っている。太陽は私生活も隠さないタイプだが、沙名子は私生活を隠すキャラなのだ。だからこそ太陽は慎重にならざるを得ない。

沙名子のことを話すなら・・・と、助手席でのんびりと、まわりの景色を眺めている山崎柊一に目をやる。
「森若さんはクレバーな人だよな」と言う山崎柊一は、女性を色気とか可愛げとかで判断しないだろう

沙名子は開発室で山崎柊一と話す!吉村部長でなくても有能な山崎は手放さないと確信!

森若沙名子は、月に一度入浴剤開発研究室を訪れている。経理担当者と小口の経理処理についての確認を行う為だ。メールや電話でもいいのだが、顔を合わせて話すのが慣例になっていた。

また、鏡美月と話をしたり、時間に余裕がある時はお茶を飲んだりすることもある。社に戻る時は制服で来るが、今日は直帰するつもりなので私服に着替えてきた。入浴剤開発室に入って行くと、湯舟の前の椅子に山崎柊一が座っていた。

「鏡さんなら分析室に行きましたよ。僕は、お湯が沸くまで待っていてと言われました」
「何を待つんですか?」
「どうやら湯船に入って欲しいようです。僕は低血圧なので、参考にならないかなと思うんですが」
「低血圧なら、それはそれで参考になると思いますけど」

「ところで、森若さんはどうしてここへ?」
「仕事です」
「そうなんですか。僕はてっきり、出張費のことで注意されるのかと思った」
「出張費は問題ありません。吉村部長に伺いましたので確認済です」

山崎柊一が提出した出張費は4泊5日で、休日を含むと丸々1週間にもなる。前回も山崎柊一の出張費について、営業部の吉村部長と新発田経理部長がもめたばかり。しかし、吉村部長が問題ないと言い切るのだから仕方がない。

「しかし、僕なら納得できないな。そう思いませんか、森若さん」
「新発田経理部長が、僕の経費の使い方に目をつけているのは分かっているんですよ。経理部にしても、同僚にしても、しかるべき注意をするべきだと思います。でもみんな、何も言わないんですよ」
山崎柊一は首をひねりながら、訴えるように言う。

「吉村部長から、今回の仕事はプライベートの時にまとめたものだから、その分を上乗せしたと思えと言われました。休日に営業するなんて、営業熱心なのですね」
「ああ、まあね・・・」沙名子の皮肉を感じたのか、急に浮かない顔になった山崎柊一。

「だからと言って、4泊5日は多過ぎると思いますが」
「その通りです。みんなの前で糾弾して下さい。何なら社長の前とかでも・・・」
「問題を起こせば、営業部から出られるからですか?」
「あっ、わかりますか?!」
山崎柊一は開発研究室の仕事がしたくて、何年も前から、異動願いを出していた。

「評価を下げたいならさぼりまくったらどうですか」
「それがね、目の前にお宝が埋まっているのを見つけて、早い者勝ちだってわかっているのに、素通りするのも中々勇気がいるんですよね」

沙名子は思った。埋まっているお宝なんて、山崎以外には見えないのに決まってる。
山崎の目には、何でもないところに転がっているお宝が、見えてしまうのかもしれない。
さぼりたいと思いつつ仕事を見つけ、商談成立させてしまう・・・これがトップ営業マンなのか。

感心するべきか、呆れるべきか・・・迷ってしまうが、山崎柊一が有能だと言うことは確かである。
吉村部長でなくても、仮に沙名子が部長であっても手放さないだろうと思う。
多少経費を使い過ぎて経理部長から責められようとも・・・だ。

「山田太陽さんの営業成績が最悪の時に、社長の前で発表したのは何故ですか?」
営業部員しか知らないことだけれど、沙名子はついつい聞いてしまった。
「吉村部長、そんなことまで森若さんに言ったのですか?」沙名子がうなずくと、
「あれは、太陽のことを社長にプレゼンしたんですよ」と。

「太陽は若手のエースですからね。俺はもう適当にやるので、次はこいつだからよろしく!って感じでした。太陽は、もっと認められてもいいんじゃないかと思っているのもあるけれど」
太陽が感じていたように、やはり山崎柊一は、太陽のことを気にいってくれているらしい。

沙名子は思った!わたしは太陽を好きかも知れない!

沙名子は夜の公園を歩いていた。思ったよりも早く片付いたら、何故か急に来てみたくなったのだ・・・
今週は忙しくて大変だったので、本当なら今日は太陽に会う日だったが断っておいた。

”気づかなければ良かった・・・”
熊井(製造部の社員)の経歴を調べたりし明ければ・・・こんなことに手を付けなければ・・・
”一つの家庭を壊してしまったのだろうか”

沙名子は、製造部の熊井が業務上横領をしていたことを見つけてしまったのだ。
熊井がリベートを貰っていた会社は複数にのぼった。熊井は田倉勇太朗の親友でもあり、恩人だと言う。

沙名子は自問自答しながら、その重みに押しつぶされそうだった。
しかし、時を戻しても、やはりわたしは同じ行動を取る、勇太朗だって同じことをするだろう。
他人を傷つけておいて、自分は許されようなんて虫が良すぎる。今更優しい人になるもんか・・・

「1週間待ってから、わたしから新発田部長に報告します。その前に熊井さんを説得して下さい。弁済して自主退社をすれば解雇にはならないと思います。退職金も出るかもしれません」
沙名子は勇太朗に告げた。その後熊井は自宅待機になり、しばらくしてから退社した。

公園の1本道を歩き出そうとした沙名子は、前方から、きょろきょろしながら歩いてくる太陽を見つけた。
「あっ、沙名子さ~ん」よれよれのスーツ姿は、仕事が終わってすっ飛んできたにちがいない。
「何で来たの?どうして、ここにいるってわかったの?」

「この間、この公園をやけに気にしていただろう。何か印象に残ってたんだ。仕事終わってすぐ来たんだ。当たってた!」とニコニコ顔の太陽。しかし、ここは思いついてこられるような場所じゃない。会社からだって遠いし、太陽の住まいがある新宿からは遠い。

「あっ、もしかして俺、お呼びでない?沙名子さん一人になりたかったの?それとも用事があるとか?」
「メールしたでしょ、今週は会わないって」
「そうなんだけど、様子がおかしいって言うか、いつもの沙名子さんらしくないって言うかさ。経理部大変そうじゃん。ちょっと心配になっちゃって」

やめてくれ・・・そんなに優しくしないでくれと、心の底から叫びたくなる。
優しくされたら泣いてしまいそうだった。勇太朗や退社した熊井の家族のために・・・

「あれっ、やっぱり邪魔だった?沙名子さん。いやならごめん。俺、すぐに帰るから。ちょっと顔見たかっただけだから。そうだよね、ひとりの方がいいよね。ごめん」
優しい太陽の言葉に「いいえ」と沙名子は首をふった。何だかもうわからない。

「いいえ、一緒の方がいい」言いながら沙名子は、太陽のスーツの袖を掴んだ。
太陽は少し驚いたようだったが、すぐに笑いながら沙名子の手を取った。
「だったら、一緒にいよう!」
”ああ、駄目だ!わたしはこの男が好きかも知れない!”

沙名子は人を好きになどなりたくなかった。頼ったり、頼られたり、他人のために自分を削ったり、辛さを人に押し付けようとしたり・・・そう言うことがいやだったから。

”自分以外の人間によって、自分の世界が崩されるのが恐い” 頭ではそんなことを考えているのに、沙名子は太陽の手を振りほどけない。”ずっとこのまま歩き続けていたい!” と思う自分の心に、戸惑っていた。

まとめ

沙名子は太陽と六本木の展望台に行った時のことを思い出していた。
展望台のガラス越しに、晴れた東京の街を眺めながら、このところ毎週太陽に会っていると思う。
偶数の週だけにするつもりが毎週会うなんて・・・

ガラスに顔をくっつけて東京の六本木の街を見下ろしている太陽を見て、不思議な気持ちに襲われた。
”この男はいったい何なのだ。わたしの時間を奪い、不必要に会計のことを思い出させる。

太陽がいなければ、メールを確認するために、スマホを頻繁に見ることも、年間の被覆計画を破って服を買うことも、予定外のカロリーを取ってしまって、休日に調整することもなくなる・・・と。

「上に行こうか、結構遠くまで見えるってよ」
「そうね、行きたい。アクアラインとか、鎌田とか、東京駅とかみたいわ」
「沙名子さん、アクアライン好きなんだ!いいね、こんど車を借りて行こう。ちょっとさ寒くなってきたから、暖かくしてさ」

沙名子は太陽と一緒にいると、”わたしは彼ほど優しくない”と思い知らされるのが、ちょっといやだった。しかし、何か考える時には、太陽に会いたくなるのだ。

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